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Case 4

ニフレル「どくにふれる」
ドクドクスキルツール
ニフレル「どくにふれる」
ドクドクスキルツール

『NIFREL(ニフレル)』は水族館、動物園、美術館のジャンルを超えて、生きものや自然の魅力を直感的に間近に楽しめる「生きているミュージアム」。その施設の新ゾーン「どくにふれる」で使用される、生きものが持つ毒の特性をわかりやすく伝えるためのオリジナルツールの制作フローです。
光伸プランニングでは「ぼうぎょ」「こうげき」「むこうか」「もほう」の4種のツールを制作しました。それぞれの制作フローをご紹介します。

難易度
制作期間
1ヶ月半
制作内容
フルカラー3Dプリントオブジェ4種(ぼうぎょ)、回転体+磁力停止台座ツール(こうげき)、面ファスナーツール(むこうか)、質感再現オブジェ(もほう)
使用機材
外部フルカラー3Dプリンター、UVプリンター、デジタルカッティングマシン Zünd、溶剤IJプリンター
クライアント
minna inc.

step 0

直接ご相談を受ける

2026年1月21日

展示のディレクション、デザインを担当しているminna inc.(ミンナ)さんからラフスケッチと概要資料5〜6枚が届き、「こういうの作れますか?」とご相談をいただきました。オープンまで1ヶ月半とタイトなスケジュールだったため、スピード感を持って対応しました。

Point

話を聞きながら、制作プロセスをシュミレーションします

ヒアリングの段階で、「どの材料と機材を組み合わせれば実現できるか」を脳内で瞬時にシミュレーションします。 同時に、技術的・スケジュール的に実現が難しい要素については、早い段階で率直にお伝えします。信頼関係を築く上で大切なことだと考えています。

minnaさんからのラフスケッチをもとに作成した「ぼうぎょB」のモデリングテスト。造形の特徴から、フルカラー3Dプリンターを使い制作することに。機材を持っている協力会社さんにすぐ連絡をします。

Product 1

フルカラー3Dプリントオブジェ「ぼうぎょ」の制作プロセス

step 1

3Dデータ制作・技術検証

2026年1月22日〜27日

フルカラー3Dプリンターを使って毒々しい色とカタチをした造形物を作ります。
造形を実現できるか確かめるため、まず最初に3Dデータを作成します。

Point

スケッチや図面から、3Dデータを作成します

3Dプリンターを使った造形だからといって、3Dデータでの入稿でなくても大丈夫です。
今回の場合は、いただいたスケッチの造形イメージと3Dソフトの特性を考え、Fusion360、Rhinoceros、Blenderと3種類の3Dソフトを使い分け、モデリングを進めました。

エンジニア3名が分担して4種類の造形を進めます。こちらは「ぼうぎょB」のデータ。

step 2

フィードバック&データ修正

2023年1月28日〜2月17日

デザイナーさんからのフィードバックと、3Dデータの修正を繰り返します。
同時に、フルカラー3Dプリンターを持っている協力会社さんと、色合わせや入稿データの確認を進めます。

step 3

テストプリント

2023年2月20日

3Dデータが完成し、協力会社さんにフルカラープリントのテストをしてもらいます。
実際に出力しないとわからない造作エラーが発生することもあるので、協力会社さんとコミュニケーションをとりながら修正をします。

一部原寸や全体縮小のテストプリント。右下の造形では、造形時にトゲ部分が取れてしまうエラーが発生。

step 4

完成

2023年2月26日

テストプリントでのエラーを修正し、データが完成したら
いよいよ本出力を依頼します。依頼から数日後に無事オブジェを受け取りました。


Product 2

回転体+磁力停止台座「こうげき」の制作プロセス

step 1

試作品制作

2026年2月10日頃

金属の回転体がコロコロと台座の上で転がり、台座の端っこで裏に仕込んだマグネットで止まる、というツールを制作します。ネオジウムマグネットをMDFの台座に埋め込み、上からシートを貼って機構には目隠しを。
まずはMDFを掘り込む深さのテストから始めます。

step 2

素材検証

2026年2月13日頃

1. 回転体の材料検証

磁力と重さの関係を観察しながら複数の素材を検証し、
台座の端でしっかり停止する素材を探します。

Point

素材探しは、手を動かして、実践あるのみ

台座の端でうまく止まる回転体を探します。マグネットシート、スチールペーパー、単管パイプなどを試しますが、重かったり磁力が弱かったりと、うまく止まらず、最終的に軽くて磁力が強いブリキ缶に決定しました。最適な素材が見つかるまで試行錯誤します。


2. 台座の磁力の検証

回転体の素材とあわせて台座のマグネットの磁力を検証します。
マグネットが一列だと、回転体と台座は点でしか接さず、思い通りの場所で止まらないためマグネットを二列に配置します。

磁石の間で「ガガガガッ」と跳ね返りながら、両方から吸い込まれるように減速。「毒にしびれたようにビリビリと震えて止まる」という絶妙な動きを、実現しています。

step 3

本制作

2026年2月21日頃

仕様が決まったら、本制作をします。
最終仕上げは表面にシート貼りを施します。綺麗に仕上げるため、台座のMDFを機械で彫り込んで磁石を埋め込み、パテ埋めをして一箇所ずつ隙間を平滑に均します。外見からはマグネットの存在が分からないよう、フラットにしています。


Product 3

面ファスナーツール「むこうか」の制作プロセス

step 1

素材選定

2026年2月10日頃

土台とブロックに面ファスナーのオス・メスを貼り分け、くっつき具合を検証するツールです。

デザイナーさんが希望するイエローの面ファスナーは衣装用が多く、裏面に糊打ちがされていないため、全面に糊を塗布しドライヤーで乾燥させ、糊付き面ファスナーから制作します。

Point

理想の資材がなければ、つくります

糊付きのものがなければ社内で糊を塗布しますし、幅が足りなければ継ぎ目が出ない美しい貼り方を考えます。既製品の枠にとらわれず、現場の技術とアイデアで、つくりたい形に応えます。

step 2

本制作

2026年2月20日頃

自由曲線のステージが段状に積み上がっている構造のため、各段のサイズに合わせて面ファスナーをピッタリのサイズにカットして貼ると完成です。


Product 4

質感再現オブジェ「もほう」の制作プロセス

step 1

素材選定

2026年2月17日

100mm角のモルタルと木材の立方体を別の素材を使って限りなくそっくりに制作し、「どちらが本物かわからない」状態にするオブジェの制作です。
軽量なスタイロフォーム(断熱材に使われる高密度な発泡スチロール)に、UVプリントで印刷を施すことで再現できるのではないか、という仮説をもとに試作します。

デザイナーさんからは、本物のコンクリートと木材、およびそれらを各面から撮影した写真データの支給を受けました。

step 2

素地づくり

2026年2月17日〜20日

50mm厚のスタイロフォームを貼り合わせて100mm角にします。 貼り合わせによって生じる継ぎ目をなくすため、プリント面にジェッソを重ね塗りしてからサンディング。この作業を反復することで調整します。

手前の白いものがジェッソを塗ったもの。奥の青いものがカットしたスタイロフォーム。
モルタルはスタイロフォーム特有のざらざらとした素材感が本物に近いため、下地はサンディングのみで仕上げます。本物のモルタルならではの「角の欠け」なども再現し、見た目の印象を整えています。

木材はスタイロフォームのままだと木材が持つツヤ感やエッジ(角)が立つ印象が出せないため、表面に0.5mmの塩ビ板を貼ることで、表面を均一で硬質な仕上がりにし、木材の塊感を表現しています。

step 3

UVプリント・色合わせ

2026年2月20日〜24日

テクスチャーの色合わせをします。
Photoshopでデータを修正しながら、出力と色調整を繰り返し、最終データを作成します。
「どちらが本物かわからない」レベルを目指し1面ずつ色合わせします。

最初のうちは板状のスタイロフォームでアタリをつけ、次に本番同様の立方体で色を合わせていきました。
立方体でのテスト数はなんと9個(計54面分!)にもなり、泥臭く検証を繰り返しました。

Point

最後の最後は、色鉛筆で

最終仕上げでは、プリンターでの再現が難しい濃淡を色鉛筆で補正。 面と面が接する、印刷が乗らない角の境界を色鉛筆で加筆したり、手作業で色の奥行きを加えています。

step 4

仕上げ

2026年2月26日

モルタルは、スタイロの素材感を活かし直接プリント。木材はスタイロの上に塩ビ板を貼り、その上から印刷することで角の立った印象を再現しています。 本物そっくりの模倣品の完成です。

どちらが本物のモルタルに見えますか?

Complete

発送・納品

2026年3月12日

「ぼうぎょ」「こうげき」「むこうか」「もほう」全ての制作物が揃ったら、ニフレルへ発送、納品です。新ゾーン「どくにふれる」は2026年3月18日に無事オープンしました。

Note

営業担当:原

今回の制作は、「ぼうぎょ」は技術開発部、「こうげき」「むこうか」は制作部、そして「もほう」は制作部とデザイン出力部…と、社内の全部署が関わる珍しい案件でした。
フルカラー3Dの検証や、理想の素材探し、立体物へのシビアな色合わせなど、初めての課題も多く、探り探りのスタートでした。それらを一つ一つ泥臭くクリアしていく過程は、個人としても会社全体としても、新たな知見やノウハウを蓄積する貴重な経験となりました。
最後にデザイナーさんから、「光伸さんってハードルの高い制作をどうにかやってくれると思ってましたけど、まさか本当にここまでのクオリティで仕上げてくるとは驚きました!」と、これ以上ない嬉しい言葉をいただくことができました。